ヤマハが誇る日本の名車「SR400」。
惜しまれながらも2021年に43年にも及ぶ歴史に幕を下ろしましたが、現在も多くのライダーから愛されている素晴らしいバイクです。
このシリーズでは、筆者の愛車である2001年式キャブレターモデル(通称:3型)のSR400を元に、メンテナンスの記録をお送りしていきます。
筆者は整備に関しては素人ですが、SRを購入して15年、愛情をたくさん注いできました。
そんなあふれ出すSR愛を以て、皆さんの車両のメンテナンスにも役立つような説明や画像の選択を心がけて参りますので、ぜひ最後までお付き合いください。
今回は走行には直接関係無いものの、バイクの愛着を何倍にも感じることができるクランクカバーのバフがけです。
1.バフがけに必要な道具
SR400のクランクカバーのバフがけを行うにあたり、以下のペイントリムーバーとやすり、研磨剤を準備しました。
クランクカバーの表面がクリアで保護されているため、最初にペイントリムーバーでクリア層を除去するために必要です。
やすりならばペーパーでもいいのですが、筆者はこのスポンジタイプのやすりが使いやすくて重宝しています。
クランクカバーの素材であるアルミの状態にもよりますが、概ね400番から1500番程度の番手のものをご用意ください。
やすりの後に使うのがこの二つの研磨剤です。
ワコーズのメタルコンパウンドとオートゾルのメタルポリッシュです。
この二つを仕上げとしてコンパウンド→ポリッシュの順に使います。
以上のツールを駆使していけば、ディスクグラインダーなどの電動工具がなくてもクランクカバーをピカピカの鏡面仕上げにすることができます。
実店舗では2りんかんなどのバイクショップで全て揃うでしょうし、やすりならコーナンの方が比較的安く購入できます。
2.クランクカバーを撤去
それでは作業を開始していきます。
当該のクランクカバーはこのように一切の輝きを失っております。
約10年前に業者にバフがけを依頼し、クリアを吹いた状態で納品されてきましたが、10年も経つとただの灰色です。
とはいえ、アルミ特有の白い腐食がまだ起こっていないため、程度としては良好です。
ボルトを外し、クランクケースやフロントスプロケットが剥き出しとなりました。ボルトさえ外せばケースは簡単に外れます。
ここは定期的に開け、ガスケットの劣化やスプロケットの汚れを確認しておくとよいです。
外したボルトは場所によって長さが異なるため、どこがどの長さだったか把握しておきましょう。
ボルトを元の場所につけておけば間違いや紛失を防ぐことができます。
3.ペイントリムーバー
クランクカバーの一番外側を覆っているクリア層を除去するべく、ペイントリムーバー(塗装剥がし)を刷毛で塗っていきます。
特にコツはなく、全体に万遍なくリムーバーを塗っていくだけです。
刷毛はコーナンなどに売っている100円程度のものでOKです。
使用していると毛が抜けますが、塗装するわけではないので問題ありません。
塗り終えたら幾分か時間を置いてリムーバーが完全に浸透するのを待ちましょう。
時間が経ったらスクレーパーを使って塗装をごっそりとそぎ落とします。
これがなかなか快感です。
完全にクリア層を除去することができました。
しかし元が透明なので、本当にクリアが落ちているか不安になりますね。
この段階でウェスにコンパウンドを少しつけて磨いてみましょう。
ウェスが黒く汚れたらクリアが落ちている証拠です。逆にウェスが黒くならなかったらクリア層が剥がれていないということですので、もう一度ペイントリムーバーを塗っていきましょう。
ちなみに今回クリアの拭き直しは行いません。
当初より筆者はバフがけ後のクリアは不要だと考える派ですが、10年前の業者にはその意図が伝わっていないようでクリアが吹き付けられていたのです。
確かにクリアがあればアルミの退色を遅らせることができますが、簡単に磨くこともできなくなります。
たまの休みの日にサっと磨いて輝きを取り戻させ、悦に浸って眺めながらコーヒーを飲む。それがいいのです。
4.スポンジやすり
ここまできてようやくクランクカバーを磨き出します。
クランクカバーの状態にもよりますが、600番から始めて様子を見、それで取れないサビやくすみがあれば400番など番手を下げてみましょう。
アルミはメッキやステンレスとは違って定期的に磨いてやらないとどんどんと曇っていき、元が鏡のような輝きであったとしても灰色にまでくすんでいきます。
こうなってしまえば研磨剤だけでは輝きを取り戻すとはできず、やすりがけが不可欠です。
水研ぎでどの番手も手を抜かず、時間をかけて丁寧に磨いていき、番手を上げてはまた一層丁寧に磨きと、どんどんと番手を上げていきます。
注意点として、今の番手で消えない傷は上の番手でどれだけ磨いたとしても絶対に消えることはありません。
面倒ですが妥協しないためにも下と番手に戻り、全体をならして傷を消しましょう。
400→600→800→1000→1200と段階を刻んで番手を上げていき、最終的に1500番程度までやすりで磨いたら、ようやく研磨剤の登場です。
5.二つの研磨剤
用意したワコーズのメタルコンパウンドとオートゾルのメタルポリッシュ、まずは粒子の荒いメタルコンパウンドから使用します。
クランクカバーは車両についている方が磨きやすいと感じたため戻しました。ここは個人差が分かれるところでしょう。
ウェスに2cm程度メタルコンパウンド乗せ、磨き残しがないようクランクカバー全体をしっかり磨いてください。
量が足りないと感じたら適宜追加しましょう。
頃合いを見て、一旦綺麗なウェスで拭き取りアルミの状態を確認してください。
やすりがけと同様、全体がならされてきたら次の研磨剤に移るポイントです。
メタルコンパウンドとは別のウェスを使うか、同じウェスでもメタルコンパウンドがついていない部分を使ってメタルポリッシュで磨いていきます。
特に工程は変わりません。
磨き終えたら綺麗なウェスで研磨剤を拭き取りましょう。
ウェスで拭けば拭くほどクランクカバーが輝きだしてくる最高の時間です。
完成です。概ね鏡面にすることができました。
まだまだ磨きが甘い感もありますが、しっかり磨き直すにはまた下の番手からやり直す必要があるため、今回はこの程度でよしとしておきます。
遠目からみると問題なく輝いているのではないでしょうか。
クランクカバーを磨いただけで車両全体が綺麗になったように見えるから不思議です。
6.おわりに
磨きはお金もそれほどかけずに自分でやれるカスタムの最たるものだと考えます。
高いパーツに換装するカスタムも魅力的ですが、今回のように手間をかけてパーツを磨いてやることもまた立派なカスタムでしょう。
大切な車両をもっと愛着を持つためにも、ぜひクランクカバーのバフがけに挑戦してみてください。
ちなみに研磨はアルミだけです。メッキやステンレスには研磨は禁忌ですのでご注意ください。
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作業の様子を動画に収めてYoutubeにアップしていますので、文章や静止画で分かりにくい方は動画も併せてご覧ください。
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