カワサキの250ccバイクである250TR。
生産終了したものの、大変人気のあるバイクで、中古相場も比較的高めに設定されています。
250TRのカスタム車両を入手したため、自分でできる範囲でDIYカスタムを行っている様子をご紹介していくシリーズ展開の今回は第10回目です。
前回の記事はこちらです。
前回はエンスト癖のある250TRを直すべく、バルブクリアランスの調整を行ったところでした。
技術が必要なメンテナンスでしたが、しっかり下調べをして挑めば以外と自分でもできるものです。
今回はブレーキホースおよびブレーキフルードの交換メンテナンスを行った件です。
自転車から自動車に至るまで、すべての「車」には絶対的に必要不可欠なものが「ブレーキ」ですので、素人が下手に触るものではありません。
しかし、感覚に頼るのではなくその仕組みや機構をしっかりと理解し、適切な整備を行うことができればブレーキとて管理することが可能です。
この記事を読むことで、250TRに限らずバイクのディスクブレーキの整備に役立つ内容になっていますので、ぜひ最後までお読みください。
1.既存のブレーキ状況
250TRには現状販売での購入のため、ブレーキフルードが劣化している可能性がありました。
普通に乗る分には問題なくブレーキは効いていましたが、現状販売である以上、状況を確認しないわけにはいきません。
また元からついているブレーキホースの色も好みのものではありませんでした。
このようにバンジョーボルトなどが赤と青で構成されていますが、私はボルトからホースまで黒一色のものが好きなのです。
2.必要備品の準備
ブレーキのマスタからキャリパーまでのブレーキ内部を満たし制動の要を担うブレーキフルードですが、使用したのはこちらのフルード液です。
ホンダ車用とのことですが、フルード液の中でも最もポピュラーな印象があったため、これを選択しました。
もう一つの必需品として、注射器があります。
キャリパーのフルード穴からフルードを吸い出すために必要なものですが、必ずしも必要ではなく代替品でも良いですしやり方によっては不要です。
3.原理と仕組み
作業に入る前にまずはディスクブレーキの原理と仕組みを理解しましょう。
ディスクブレーキはパスカルの原理によってその制動力を得ることができます。
細かい理論はウィキペディアを読んでいただくとして、簡単に言うと、密閉された中にある液体(ブレーキフルード)の一部が押されると一部が盛り上がるということです。
ブレーキレバーでフルードを押すと、キャリパーのシリンダーが押し出されてホイールと一緒に回るディスクを挟まれることでブレーキとなるのです。
作業イメージとしては、ブレーキマスタからキャリパーまでの道筋を不純物なくすべてブレーキフルードで満たすイメージです。
これだけでも理解しておくと作業の一つ一つに意味を持って施行することができます。
ブレーキやバイクに限らず、DIYをするなら原理や仕組みを大まかにでも理解するようにしましょう。
4.作業開始
ここからようやく作業が開始されます。
まずはブレーキマスタのカバーを外します。
なめやすいネジですので、ゆっくり慎重に取り外してください。
この250TRは長い年月マスタを開けたことがなかったのでしょう。
気を付けていたのに、見事にネジ山をつぶしてしまい、ドリルに頼ってしまいました。
まあなめやすいということは柔らかいといことですので、手持ちの手動ドリル(ピンバイス)で難なくネジを除去することができました。
今回はホースを替えることが主目的のため、マスタ内のフルード液を拭き取ったらホースを外し、新たに用意したホースに交換します。
ブラック一色でシックな印象です。
ほんのワンポイントなのに、ずいぶんと印象が変わるものです。
ホースが交換できたら、下の画像のようにキャリパー側のフルード液の出口(以下:ブリーダー)にホースを設置します。
ホースの先は、本来なら注射器なのですが、私は代替品としてシャンプーのポンプを先に付けています。もちろんリンスでもコンディショナーでも可能です。
このポンプをプッシュすることによって、注射器でブレーキホース内のフルード液や空気を引っ張ることと同じ効果を発揮することができます。
また、併せてブリーダーを開け閉めすることも効果的なので、サイズのあったメガネレンチなどを画像のように設置しておいておくとスムーズです。
ここまで準備ができましたら、マスタにフルード液を入れます。
フルード液は塗膜を浸食してしまいますので、塗装面にこぼさないように注意をしてください。また極力肌にも触れないようにしましょう。
そうしたらブリーダーのシャンプーポンプをひたすらプッシュプッシュです。
かなりの回数をプッシュしなければなりませんので、不安な人は注射器を準備しておきましょう。
徐々にフルード液がポンプから出てきます。
マスタに入れたフルード液がブレーキホース内を通り、キャリパー内を満たしてブリーダーから出てきているのです。
これと同時に、ブリーダーに設置したメガネレンチを使ってブリーダーのボルトを開けたり締めたりすることで、フルード液をより引っ張ることができます。
開けたり締めたりが文章だけではよくわからないでしょうが、実際にやっていると感覚を掴むことができるでしょう。
5.エア抜き
フルード液がブリーダーがから出てきたらOKではありません。
まだまだフルード液の経路にはフルード液だけではなく空気も混ざっています。
この空気を完全に抜き切ることをエア抜きといいます。
空気が少しでもあると「エアが噛んだ」状態になってブレーキを効かすことができず、事故につながります。
昔の医療ドラマで、入院患者さんの点滴に空気を混ぜて死亡させたシーンがありましたが、エアが噛んでいるということはこの状態と同じです。
ブリーダーにつなげたホースをよく観察していると、フルード液と共に空気もたびたび出てきますので、空気が完全になくなってもうフルード液しか出てこないとところまで根気よくフルード液をマスタから引っ張りましょう。
この際、下ばかりに夢中になっていると上のマスタ内が空っぽになってしまい、せっかくあと一歩というところでまたエアを噛んでしまうということになりかねません。
ポンプを数回プッシュしたらマスタを確認、フルード液が減っていたら補充と、このサイクルを遵守しましょう。
6.整備完了
マスタからキャリパーまでフルード液で完全に満たすことができたらマスタのふたを閉め、ブリーダーのボルトを締めて完了です。
なんとか無事ブレーキとしてちゃんと効く状態にまでもっていくことができました。
実際に走行する前には必ず入念にチェックし、間違いなくブレーキが効くことを確認するようにしてください。
しかしブレーキを触ることは本当に怖く、よく運転免許の試験問題にも
「ブレーキが調子悪いことはエンジンが調子悪いことよりも大変である」
といった設問があるくらいですので、細心の注意が必要です。
しかし、自分でやれたという達成感は本当に大きいものです。