世界的な人気を誇るマンガ「ドラゴンボール」。
勧善懲悪が如実に描かれており、正義が悪を倒す様子は爽快です。
しかし、物語後半の「魔人ブウ編」にある天界一武道会での「ビーデルVSスポポビッチ戦」は明らかに異質です。
一体どのような戦いで、当時の鳥山明先生や編集の方はどのようなお考えだったのでしょうか?
アニメやその他媒体には触れず、原作のみの情報を踏まえて一つ一つ徹底的に考察していきますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
1.ビーデルとスポポビッチ戦の概要
ビーデルとスポポビッチの戦いは単行本37巻で繰り広げられます。
天下一武道会での一試合であるため、一定のルールに基づいて戦いが行われるのですが、当時16歳であるピッチピチの女子高生ビーデルが、自分の何倍も大きい筋肉隆々の巨漢のスポポビッチにボッコボコにされるのです。
ピッチピチがボッコボコです。
それが約2話分にまでわたります。
- 気功波 1発
- 顔面平手 2発
- 蹴り上げ 2発
- 顔面パンチ 2発
- 顔面膝蹴り 1発
- ボディブロー 1発
- 頭部踏みつけ 1発
- 箇所不明 4発
絵で明示されているだけでも計14発も攻撃をくらってしまっています。
これらの攻撃によりビーデルは吐血、鼻血など流血、歯も折れてしまいました。
あくまで天下一武道会ですので、降参するなり、場外に出るなりすればいいものを、負けず嫌いなビーデルの性格が災いし、ここまでの傷を負ってしまうのでした。
それまでもナッパやリクームにボコボコにされた悟飯など圧倒的な力の差のある戦いは結構ありましたが、のちに悟空が助けにきて、相手を逆にボコボコにするという流れが王道のパターンであり、気分爽快でした。
ビーデルのような女の子がボコボコにされるのは初めてです。
(女性である18号もベジータがとの戦いで何度か攻撃をくらっていますが、ほとんで効いていないため除外します)
その後スポポビッチはバビディに超能力で爆発され死亡しますが、いまいち読者がスッキリする展開ではありませんでした。
2.考察の開始
以下に考察を展開していきます。
3.魔人ブウ編の本格的な開幕戦的役割
悟飯が出場しないといけなくなったことから、たくさんのZ戦士たちが出場することとなった天下一武道会。
マンガの中でも久しぶりの天下一武道会ですし、悟空があの世から帰ってくる点や、ベジータと試合するかもしれない点など、大変わくわくさせる展開となっております。
大会は子どもの部もあり、トランクスと悟天の決勝戦など微笑ましいストーリーが続きます。
そんな中、不敵な笑みを浮かべる界王神さまの登場、ピッコロの戦慄からの試合棄権、を経てのビーデル・スポポビッチ戦です。
奥に控えている「強大な悪」を徐々にほのめかすための演出であり、魔人ブウ編の本格的な開幕を告げる役割を担ったのではと考えます。
ビーデル・スポポビッチ戦を皮切りに、楽しい天下一武道会の雰囲気が一転、重苦しいものへと変わっていきました。
そう考えれば、この戦いは見事は演出だったのではと推察します。
4.バビディに操られた際の凶暴性を示唆
のちにベジータがスポポビッチ同様バビディに操られ(るように仕向け)ますが、バビディに完全に洗脳されていないとはいえ、一般人を大量に殺害するなど過去の残虐性を取り戻しています。
当時の読者に対し、ベジータも理性のタガが外れ、「悪そのもの」のベジータが戻ってきたことをわからせるためには、事前に操られたヤバい人を提示するのが一番です。
また、「バビディに操られると強くなる」ということもどこかのシーンで説明する必要があります。
そのようなメリットがないとベジータが操られたい理由がありませんしね。
以上のことから、のちにベジータがバビディに操られた時の理由や残虐性を読者に示すための補足として、あらかじめスポポビッチで表現させたのではと考えます。
5.最強である悟飯の怒りを引き出すためか
怒りをコントールできれば作中最強との呼び声も高い悟飯。
その後の活躍を踏まえ、大切な友達である(この時点ではその程度の感情?)ビーデルをボコボコにしておくことによって、怒りを引き出させるということが考えられます。
しかし、ビーデルがスポポビッチにボコボコにされている最中は怒りに震えスーパーサイヤ人になるものの、仙豆を食べさせた後はずいぶん落ち着いた様子の悟飯。
そしてその怒りは持続することなく、ダーブラ戦ではセルを倒した時のような強さを発揮するには至っていません。
その後、復活したブウにも完敗しています。
このことから、悟飯を怒らせるという目的ではないということが考えられます。
6.悟空に仙豆を取りに行かせたかったためか
筆者の中ではこの説が最有力候補です。
全身殴打に加え、顔面も何発も殴られ蹴られているため、歯も折れてしまったビーデル。
もはや一般救急では手に負えません。
しかし、ドラゴンボールにはケガや疲労を完全に回復させることのできるエリクサー的存在である「仙豆」があります。
6-1.カリン様を登場させたかったのか
仙豆はカリン塔のカリン様しか作れないため、”カリン様を登場させたかったのか”と考えました。
悟空が瞬間移動でカリン様のところへ行き、仙豆3つをもらい受けた際、
「イヤな予感がする」とカリン様は言いました。
「うん、オラもだ」と呼応する悟空。
そして年月が経ちヒゲの生えたヤジロベーがバックに。
ですが、カリン様を登場させ、このセリフを言わせることが重要とは考えられません。
6-2.チートを早めに封じることを読者に提示
あとあとバビディたちとの闘いが始まってから瞬間移動で仙豆を取りに行ってはなにか興ざめします。
「ピンチになったらいつでも瞬間移動で仙豆を取りに行けばいい」
このように読者に思われてしまってはご都合主義と捉えかねられず、緊迫感がありません。
まだ深刻な戦いが始まっていないこのビーデル・スポポビッチ戦あたりで仙豆をもらいにいき、そこで
「仙豆は3つしか残ってない」
と事前に読者に情報を与え、チートである「瞬間移動からの仙豆」を封じることが目的だったのではないでしょうか。
7.まとめ:どうしても必要性が感じられない
以上のいくつかの推察が考えられますが、どれを取ってもあの残虐な戦いの必要性を見出すことはできません。
もはや鳥山先生はドラゴンボールをもう書きたくなかったと噂されていますが、それでも続けさせられたことや、悟飯を主人公にして学園ものを展開しようとしたら「悟空を出せ」「戦え」などと読者に言われ、うっぷんがたまっていたのかもしれません。
しかし、これほどファンの記憶に残っているのであれば、あの描写は「成功」であるといえるでしょう。
ビーデルはその後、悟飯と結婚しパンちゃんをもうけますので、本当に幸せになってくれてよかったです。