ヤマハが誇る日本の名車「SR400」。
惜しまれながらも2021年に43年にも及ぶ歴史に幕を下ろしましたが、現在も多くのライダーから愛されている素晴らしいバイクです。
このシリーズでは、筆者の愛車である2001年式キャブレターモデル(通称:3型)のSR400を元に、メンテナンスの記録をお送りしていきます。
筆者は整備に関しては素人ですが、SRを購入して15年、愛情をたくさん注いできました。
そんなあふれ出すSR愛を以て、皆さんの車両のメンテナンスにも役立つような説明や画像の選択を心がけて参りますので、ぜひ最後までお付き合いください。
今回はスピードメーターとタコメーターの針の振れと異音を修正しました。
安全な走行には正しく作動するメーターが不可欠です。
正確な速度と回転数を把握するためにも、ぜひ最後までお読みいただき、メーターの不具合は解消していきましょう。
※本記事のメーター修正は機械式であるSRのケースをもとに記述しています。電気式とは異なりますのでご了承ください。
※使用している画像は筆者が撮影したyoutube動画からの切り抜きですので、文字が入っていますが気になさらないでください。
目次
1.メーターの針の振れとは
メーターの針が振れる症状とは、走行中に針の動きが安定せず常にプラプラと動いている状態を指します。
例えば故障していないスピードメーターだと、50km/hで走行中は針がピタッと安定していますが、針が振れる状態だと50km/hで走行時も45~55あたりまで振れ幅があります。(振れ幅の度合いは故障具合によります)
針が正しい値付近までは来るものの、メトロノームか振子時計のように動いているのです。
2.メーターの針が振れる原因とは
メーターの針が振れる原因としては複数考えられますが、メーターケーブルやメーターギアの劣化ならそれらを交換すればいいだけですので比較的容易です。
ですが原因がダンパーオイルの枯渇だと、メーターを開け、オイルを補充する必要があるのです。
針の根元にはダンパーオイルという粘度の高いオイルがごく小さなタンク内に満たされており、そのオイルの粘度によって針が振れることなく正常に作動する仕組みになっています。
オイルのナンバーは100,000とありますが、これは粘度を数値化したもので、水の粘度1が基準となっています。
ネットで調べてみると80,000の推奨する方もいらっしゃいましたが、80,000~100,000の間であれば問題ないでしょう。
3.メーターのカシメを起こし内部を露出
では作業を開始していきます。まずはメーターを分解すべく、リムのカシメを外していきます。
リムに傷がつかないよう養生テープを3重くらい巻いておいてください。
専用工具がないため、マイナスドライバーをいくつか用意し、少しずつカシメを起こしていきます。
一気にやろうとするとリムが曲がるなどしてしまいますので、焦らず慎重にゆっくりとカシメを起こしましょう。
全円周のカシメが起きれば、カポッとカバーが外れます。
あとは下部のボルトを2本外すだけでケースと基部を分離できます。
続いて針→パネルの順に外していきます。
針は結構硬いので、フォークなどを差し込んで真上に力を加えて引き抜いてください。
隙間がわずかなので薄いフォークが必要ですが、強度がないとフォークが曲がってしまいます。
そしてパネルに傷をつけられないことから、てこの原理は使用できずなかなか困難を極めます。
少しくらいのパネルの傷ならツヤ消しスプレーを拭くことで消えますので、柔らかいウェスを挟んでてこの支点にしてもいいでしょう。
パネルもネジ2つで留まっています。
指で示した先がダンパーオイルで満たされているべきタンクです。
4.タコメーターのダンパーオイルを補充する
ダンパーオイルを補充するために、基部の横板を少しずらします。
この横板も硬くカシメられているため、ペンチで強固に掴みつつも、静かにゆっくりと外していきましょう。
強い力が加わったままだと針の軸が曲がったり、ゼンマイが伸びたりしてしまいますので、細心の注意を払ってください。
横板を基部からさほどずらさぬよう持ちながら、ダンパーオイルのタンクを確認します。
ご覧の通り、中が空であることがわかりますね。
この個体はSRの中でも初期型のメーターなので、製造からおよそ40年ほど経っていることから、さすがにオイルが蒸発したのだと考えられます。
タンクにオイルを入れていきます。
スポイトも用意しましたが、100,000の粘度では全く吸うことができなかったため、画像のように細いドライバーを用いて自由落下でオイルをタンクに注ぎ込みました。
おおよそ8割方入ればOKです。
100,000の粘度で満杯までいれると固くなりすぎて針の動きが鈍るようです。
5.スピードメーターのダンパーオイルを補充する
続いてスピードメーターにも同様にダンパーオイルを補充しますが、タコメーターと違い、オドメーターやトリップメーターがあるため、格段に作業しにくいです。
横板のカシメを外しつつ、オドやトリップも避けていく必要があります。
オイルをタンクに注ぐためには、タコメーターの時より細く長い棒があると少しやりやすいでしょう。
苦労してダンパーオイルを補充できた後は、オドとトリップを動かすギアにグリスアップを施します。
使用したものはミニ四駆のギア用グリスですが、それほどこだわらなくてもいいのかもしれません。
仕上げにタコおよびスピードメーターケーブルの挿し口付近に潤滑スプレーを流し込んでおきます。
この部分の潤滑効果が切れていたことで、異音が鳴り響いていたのです。
エンジン音やマフラー音が支配する走行中であるにも関わらず、女性の叫び声のようなけたたましい音が聞こえてきて大変恐怖を感じましたが、その実こんなところの潤滑剤が切れていただけでした。
40年にもなるパーツはいろいろな不具合が生じてきます。
6.動作確認しリムのカシメを閉め完了
うまくいっているとは限りませんので、リムをはめる前に必ず動作確認をしましょう。
電動ドリルを逆回転にしてメーターに突っ込むことで実際のケーブルの動きを再現することができます。
ドリルはケーブルの太さより細いものを選択し、ドリルとしての役割を果たしてしまわないようビニールテープなどでドリルの先を保護してから、メーターに突っ込んでください。
※電動ドリルをお持ちでない場合は、バイク本体に装着するしか動作確認方法がありませんので、リムのカシメを閉めずに車両に取り付けて確認してください。
カシメを閉める前にレンズの内側を丁寧に吹き上げます。
メガネ拭きのような柔らかい布で、かつ曇り止めをしっかりの塗り込みます。
内側から曇ったり露が発生したりしたらどうすることもできませんので、出来うる限りの対対策を講じておきましょう。
全ての作業を終えているかを指差し確認してから、カシメを閉めてください。
リムに傷をつけないよう、ペンチの片側がプラスチックで保護されているものを使用します。
以下のリンクのペンチは、両側にプラスチックが付いているタイプのものですが、ネジで取り外しすることができます。
虫や水分などが入り込まないよう、念入りにカシメを閉められたら作業完了です。
6.おわりに
以上、タコメーターとスピードメーターのダンパーオイルの補充をご紹介してきました。
今回の作業は結構な手間と技術を要し、筆者も大変苦労しました。
特にダンパーオイルのタンクにアプローチすべく横板を外していく作業は、下手すると針を曲げたりゼンマイを狂わせたりと、破損させてしまう恐れもあります。
しかしながら、メーターのリムを外す経験をしておくと、基部の修理はできなくても交換はできます。
廃盤になったメーターパネルを使いたい時など、基部の交換ができるだけで選択肢が大幅に広がるのです。
まずはヤフオクやメリカリなどで安くメーターを仕入れ、リム外しから練習してみるといいでしょう。
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作業の様子を動画に収めてYoutubeにアップしていますので、文章や静止画で分かりにくい方は動画も併せてご覧ください。
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